音楽、映像、ダンス、写真で構成する新しい舞台。
戦後の復興を語る老人の身体から、現代的な問題を炙り出す意欲作。

12/01/28|復興ダンゴ

老人ホーム・REMIX #2「ドキュメンタリー・オペラ『復興ダンゴ』」を、完成形ではありませんが、現時点で上演できる範囲内で上演して、特別養護老人ホーム「さくら苑」の皆さんに鑑賞していただきました。また、照明の伊藤さんとも打ち合わせしました。本日の試演も一部撮影して、これも含めた予告編映像が、近々上田謙太郎さんにより編集され、YouTubeで公開されることになる予定です。
さくら苑での共同作曲を開始した1999年から、ずっと参加してくれている樋上さんが、まだまだ余裕がある気がする、と言って下さいました。もっとギリギリのところでやってもいいと思う、ということのようです。手堅い範囲でまとめるのではなく、ギリギリのところで全神経を張り巡らせていくこと。肝に銘じました。
タイトルが「復興ダンゴ」という言葉になっていて、このタイトルをもっと深めていきたい、と「ダンゴ」という言葉の意味について、一日考えておりました。

ダンゴ=「段5」

かもしれない。そう思い始めると、映像とピアノによる歌曲が5曲ある。だったら、段1、段2、段3、段4、段5なのか。5 Steps。ダジャレで考えるとどうかな、と考えたり。

談5=Tango

談4=男子=House Boy

談3=旦さん=「旦那さんは戦争行かなかった?」

談2=?

談1=?
ダンニ、ダンイチ、って何だろう? そんな風に、ダジャレの謎を考えているうちに、次の仕事のミーティングに突入しました。

12/01/26|お年寄りの言葉とヒップホップ

話している言葉の映像から作曲するきっかけは、一昨年の福岡市博物館でした。吉野さつきさんのアーツマネジメントのワークショップを題材に、映像+ピアノの作品を作りました。
で、同様のやり方で、お年寄りが戦後の復興を語る映像を題材に、ドキュメンタリー・オペラ「復興ダンゴ」を作っております。本日、映像のお年寄りの言葉に合わせて、ピアノの部分を作曲していたのですが、お年寄りの言葉のテンポやリズム、そしてニュアンスは、20代〜50代くらいの人々の日本語のリズムやテンポとは、全然違うんだ、ということを、思い知りました。
言葉をループさせて、そこに音楽を合わせていく手法は、ヒップホップ・ミュージックや、スティーブ・ライヒのミニマル音楽に近いアプローチなのですが、お年寄りの言葉は、英語のラップとは程遠く、ミニマル音楽の均質なビート感とも程遠い、非常に人間臭く独特なもので、なかなか、奥が深いです。現在、試行錯誤中です。この独特な間合いやテンポを尊重して、音楽を作っていくと、ピアノと映像による浄瑠璃になっていくはずです。勉強になります。

お年寄りの言葉のリズム感とは全然違う参考映像は、こちら



インストでのお年寄りのテンポ感は、こちら(2年前に発表した「老人ホーム・REMIX#1」)

12/01/24|砂連尾さんの独特なダンスと交わる

「ポータブル・コンチェルト」のコンサートが終わりまして、いよいよ2月18日、19日の老人ホーム・REMIX#2として発表するドキュメンタリー・オペラ「復興ダンゴ」に向けてのリハーサルが開始です。ダンサーの砂連尾理さんと、濃密な稽古をしました。今作っているのは、お年寄りの独特な動きの映像+砂連尾さんというシーンです。この特異なデュオに、ピアノで音楽をつけるわけですが、今日やっていて思ったのは、

砂連尾さんは映像を見ながら踊る

野村は砂連尾さんを見ながら演奏する

という形で作品を作っていくのが良さそうです。というのも、砂連尾さんの動きでは、映像の中のお年寄り動きが強調されているので、ダンスの輪郭が見えてきやすいのです。それにしても、砂連尾さんの振付は、非常にマニアックで独特です。

2月18日、19日の公演が楽しみです。現在、徐々に予約が増えておりますが、会場が小さいため、各公演とも予約が40名に達したところで、前売りをストップする予定です。特に18日の公演のチケット予約が最初に埋まりそうな気配です。来られる予定の方、ご予約はお早めに、とのことです。

12/01/07|写真から作曲する〜ドキュメンタリー・オペラ「復興ダンゴ」

1日から3日まで3日間は正月気分だったのですが、4日、5日と砂連尾理(ダンス)と上田謙太郎(映像)との濃密な2日間が入ってしまい、すっかり創作モードになってしまいました。2月18日、19日の公演に向けて、一気に作品の全貌が形になってきております。

昨年3月の震災を経て、6月にインドネシアで企画書を書きました。その時は、まだ具体的な作品のイメージなどありませんでした。ただ、こんなことがやりたい、という漠然とした気持ちだけがありました。

老人ホーム・REMIX #2

ドキュメンタリー・オペラ「復興」(仮称)

企 画 書

2011年6月25日

さくら苑プロジェクト実行委員会

 私(野村誠)は、コラボレーションと現代性を主軸に据えて、活動を展開してきた作曲家です。これまでに、音楽家のみならず、子ども、お年寄り、ダンサー、俳優、動物、などと、様々なコラボレーションを行い、数々の作品を発表してきました。今回、本助成を得て発表する作品は、映像とピアノから構成される新しいオペラ「老人ホーム・REMIX #2」です。

 作品のテーマは、復興です。第2次世界大戦後の日本の復興を体験したお年寄りの体験に基づきながら、2011年3月11日に東日本で起こった大震災からの復興と日本の未来について語り合い、そこから浮き彫りになる言葉を映像で紡ぎ、言葉と音楽と映像から構成される新しい形式のオペラとして、提示します。

ワークショップの会場になるのは、「特別養護老人ホーム さくら苑」〈以下、「さくら苑」〉です。私は1999年以来、12年間に渡り、さくら苑のお年寄り達と共同作曲ワークショップを続けて参りました。その成果は、『老人ホームに音楽がひびく〜作曲家になったお年寄り』(晶文社、大沢久子との共著、添付資料を参照)や、新聞、雑誌、テレビなど様々なメディアで話題となりましたし、2009年度には、本助成を受けて「老人ホーム・REMIX #1」を発表し、これまで報道されがちであった、福祉・医療的な側面ではなく、お年寄りとの共同作曲の芸術性の側面を、大きく提示することができました。

しかし、さくら苑のワークショップの中では、私が主眼を置いてきた音楽の創造的体験以外に、数限りないお年寄りの豊かな体験談に接することができます。また、かつてあった美しき日本語にも接することができます。明治、大正、そして、昭和の戦争を体験されたお年寄りの言葉をドキュメントし、芸術作品として残したい、という気持ちが沸き起こりました。特に、東日本大震災を経験している今、お年寄りの言葉から生きる勇気や希望、さらには未来への可能性を見つけられるオペラを創作し、横浜から世界に発信したいと私は考えます。日本の未来、世界の未来のために、今、芸術家として何ができるか、私なりに考えた末に導き出した結論がこのプロジェクトです。芸術の力と芸術の可能性を信じているからこそ、今、私はこの作品を発表しなければいけない、と強く感じています。
そして、その時、写真家の杉本文さんや、振付家の砂連尾理さんが、どんな形で関わるのか、全く未定でしたが、何か関わって一緒に作品を作りたい、と名前を企画書に参加アーティストとして列記しました。

さて、本日は、杉本さんから送られた8点の写真から、ピアノ曲の作曲に取り組んでおりました。そして、この8点の写真を順に曲にしようと、ピアノに向かっているうちに、この8点の写真は、一つの物語になっていることに、改めて気づき、公演のイメージがさらに明確に見えてきました。そして、写真は投影し、写真の切り替えは、まるで合奏するように、ピアノと息を合わせて展開していくのです。これは、アンサンブルなのだ、と瞬時にイメージが沸きました。公演の冒頭から最後までの全部のシーンが、一気に全て見えました。ああ、あの時に企画書に書いていたことは、こういうことだったのか、と思いました。公演詳細は、こちら。

そして、今日は、8点の写真のための音楽をスケッチしておりました。意味のある言葉がだんだん溶けていき、体験が体感になり、理念が感情になっていきます。「復興ダンゴ」がドンドン転がり始めております。

12/01/06|林光さん

林光さんが永眠されたとのことです。80歳とのことです。

ぼく自身は、8歳で作曲を始めた直後に、光さんのこの楽譜に出会い、とても好んで弾いておりました。そして、それから25年ほど経って、御喜美江さんのコンサートで、ぼくの作品と光さんの作品が演奏された時に、「実は、ぼくが最初にやったピアノの本は、光さんの本だった」と告白したのでした。その日の打ち上げで、「ぼく、鍵盤ハーモニカやるんですよ。」と、知人の結婚式だかお葬式だか何かで鍵ハモを吹いたお話をされ、「是非、今度誘って下さい。」

ぼくは、この著名な作曲家を、軽い気持ちで自分達のライブにゲストでお招きして良いものか、と迷いましたが、お声をおかけすると、ひょいひょいとやって来て下さりました。ぼくの「おやすみなさいコアラリス」をやさしい音色で吹いて下さり、自作のソングを歌い、ぼくと一緒に即興の語りやトークをして、片岡祐介の曲で、「御用!御用!」と言ったり、変な体操みたいなパフォーマンスを楽しそうにお付き合い下さりました。そして、御機嫌ようと、ひょいひょいと帰って行かれたのが、つい昨日のことのように思い出されます。

広島の被曝の情景を合唱曲「原爆小景」に作曲された光さんは、福島の原発事故をどのような気持ちで感じておられただろう?お話したいと思っていた矢先の出来事でした。

現在、取り組んでいる2月18、19日の老人ホーム・REMIX #2「ドキュメンタリー・オペラ『復興ダンゴ』」は、日本語のオペラを作り続けた光さんの志を継ぐつもりです。

安らかにお眠り下さい。

12/01/05|「復興ダンゴ」~達人と古代民謡とピナ・バウシュと

本日は、一日中、フル稼働で、映像の編集作業をしておりました。
映像のお年寄りの語りによる5つの歌曲(「こわかった」、「若かったのよ」、「Please remember me.」「雑居部隊」、「理髪の方です」)ができました。最後の「理髪の方です」は、なかなかうまく展開する曲にできて、そこから作品全体の展望が開けました。
また、お年寄りの鍵盤ハーモニカ演奏を編集した3つの小品もできました。樋上さんの鍵ハモ演奏は、絶妙なフレーズをいくつも抽出したので、あの映像は、奇跡的な達人技になっています。八木さんの鍵ハモ演奏は、あまりにも独特な節回し(上田くんは古代民謡と名づけたくらい)。そして、砂連尾さんが抽出した八木さんのダンスは、時にピナ・バウシュのようであり、樋上さんの手は、予測不可能な軌道を辿ります。編集したパソコンの映像を見ながら砂連尾さんが動くと、不思議なデュオの共振が始まります。
いやぁーー、すごいことになってきております。「復興ダンゴ」世界初演は、2月18、19日、横浜STスポットです。お見逃しなく。

12/01/04|復興ダンゴの編集開始

2月18日、19日のSTスポット(横浜)での公演ドキュメンタリー・オペラ「老人ホームREMIX#2『復興ダンゴ』」に向けて、砂連尾理さん(振付)と上田謙太郎さん(映像)と映像編集作業を行いました。
本日は、11月10日に撮影した映像素材(約2時間)を約6時間かけて見ました。これは、特別養護老人ホームさくら苑のお年寄り達と、第2次世界大戦後の復興について語り合ったビデオです。ずーっとお年寄りが話している映像ですが、ぼくは話の抑揚に音楽を感じる場面を選んで切り取り、砂連尾さんは、お年寄りの身振りがダンスだと感じた場面を切り取ります。そして、65の断片が切り取られました。
振付家の眼を通すと、お年寄りの些細な動きの中に、こんなにダンスがあったのか、と再発見させられました。それを切り取り、反復することで、微かなダンスがはっきりと見えてきます。BankARTの図書室で開催した「老人ホームREMIX #1」は、映像とピアノによるライブ、コンサートといった感じでしたが、STスポットという小劇場で砂連尾さんが関わってくれることになった「老人ホームREMIX #2」は、舞台作品になるのだなぁ、と改めて思いました。これは、確かにドキュメンタリー・オペラになります。
明日は、さらに、言葉以外の映像素材(楽器を演奏するお年寄りの映像)を中心に断片を抽出し、そして、これらの映像を組み合わせて、作曲作業を行います。いやぁー、楽しみです。

11/12/29|横浜創造界隈に載りました

ウェブマガジン「横浜創造界隈」に、来年2月の横浜でのドキュメンタリー・オペラ「老人ホームREMIX #2 『復興ダンゴ』」の紹介記事が載りました。チラシも完成し、少しずつ宣伝を開始しております。

野村のピアノ生演奏+老人ホームのお年寄りの演奏の映像が、2010年に発表した「老人ホームREMIX #1」でした。#1は、老人ホームのお年寄りの演奏にフォーカスが当たっておりましたが、今回の#2では、お年寄りの演奏も登場しますが、お年寄りの言葉にフォーカスが当たっております。老人たちが、戦後の復興について語る言葉の断片から、お年寄りが語るソングを紡ぎ、映像によるオペラを生み出そうという試みです。主軸になるのは、お年寄りの言葉で、それを、ピアノ、写真、映像、照明によって、ドキュメンタリー・オペラとして提示するのが、ぼくの作曲になるのです。

本日、杉本文さんから写真も我が家に届き、いよいよです。新年明けたら、映像の上田謙太郎くん、ダンスの砂連尾理さんと編集作業を行い、作品の全貌がはっきりしてくると思います。お楽しみに。

11/11/10|ドキュメンタリー・オペラ「復興タンゴ」(老人ホームREMIX #2)

来年2月に、横浜のSTスポットで野村誠の新作公演、ドキュメンタリー・オペラ「復興」(仮称)を行います。この作品は、「老人ホームREMIX #2」で、昨年発表した「老人ホーム・REMIX #1」の続編です。

#1では、映像(上田謙太郎)+ピアノ(野村誠)で行いましたが、#2は、それにダンス(砂連尾理)と写真(杉本文)が加わります。

本日は、そのための撮影。お年寄りに、戦後の復興についてお尋ねし、色々語っていただきました。戦後の復興から、東日本大震災からの復興のヒントを得たいという気持ちもあります。

お話を伺って印象的だったのが、戦争が終わって、「ほっとした」というコメント。現在の日本は、この終戦の時点の「ほっとした」状況ではない、ということを再確認しました。

女性陣のコメント「アメリカ人はやさしかった」です。戦後すぐに、進駐軍のアメリカ人たちから、当時20代だったお年寄り達は、随分、親切にされたようなのです。キリスト教の慈悲の精神、レデイーファーストの精神。敵国だったアメリカ人と、素直に出会えている感覚。「汝の敵を愛せよ」という言葉。そして、タンゴやワルツを大柄な黒人と踊った記憶。敗戦で全てを失ったけれど、愛は失っていなかったのですね。

その後、お年寄りたちの鍵盤ハーモニカ演奏、ベルの演奏なども撮影させていただき、新作のための撮影取材は、今回で終了。いよいよ作品づくりが始まります。

ドキュメンタリー映画の要素もあり、コンサートの要素もあり、舞台作品の要素もあるドキュメンタリー・オペラ。「復興」というテーマを、映像、言葉、音楽、ダンス、写真で、浮き彫りにしていきます。

11/09/21 老人ホームREMIX#2「ドキュメンタリー・オペラ」

震災復興の企画として、何ができるだろうと考えていた時に、お年寄りの戦争体験や戦後の復興の体験の言葉をドキュメントしながら、そこから、現代の日本につながるメッセージを見つけていくような、そんな作品を作りたい、と構想してスタートしたのが、老人ホームREMIX#2「ドキュメンタリー・オペラ」です。横浜市芸術文化振興財団の助成をいただき、2月18日、19日に、横浜のSTスポットで公演を行います。

ちなみに、老人ホームREMIX#1は、ピアノ(野村誠)と映像(上田謙太郎)による作品。お年寄りが音楽をする映像に、ぼくがピアノで共演する音楽作品でした。

で、老人ホームREMIX#2は、ピアノ(野村誠)と映像(上田謙太郎)を中心に進めますが、今回は、お年寄りの語りがたくさん出てきます。Steve Reichの映像を用いた作品を、ぼくは体験したことがないのですが、アプローチとしては、ライヒのアプローチにも似ているかもしれません。音楽の質や映像のテイストは全然違いますが。そして、今回は、少し要素が膨らんで、写真(杉本文)とダンス(砂連尾理)が加わる予定です。

写真に関しては、スライドショーのように見せるのではなく、写真一点を見せて、その写真に一曲というようなスタイルで進めたいと話しました。

ダンスに関しては、お年寄りの身体から砂連尾さんに作品を作ってもらうべく、近々、砂連尾さんと相談します。

で、本日は、普段のさくら苑での共同作曲の一コマを撮影しました。数々の名台詞も登場しました。そして、お年寄りたちの笑い声や笑顔が、本当に印象的で、お年寄りの笑いだけを集めて一曲できるんじゃないか、という手応えも得ました。